中医学古典勉強会
『黄帝内経』(こうていだいけい)は、現存する中国最古の医学書で、それは春秋戦国時代以来の医学理論の著作にもとづいて、その精髄を採り、要約して編集
し、まとめて本にしたものです。『素問』(そもん)と『霊枢』(れいすう)に分けられ、黄帝が岐伯(きはく)、雷公(らいこう)らとの問答形式で、中医学
の思惟方法、人と自然の関係、人体の生理、病理及び疾病の診断、予防、治療を論述しました。中国医学の聖書といわれます。中医学を学習する者に必ず読む本
です。
ある程度の中医学の知識を積んでくると、古典を読みたくなります。
本当の中医学基礎知識を修得するのは、ちゃんと黄帝内経の原典を勉強すべきでしょう。
古典を読むまいと、中医学の精粋を修得することができません。
古典を読むのは知識を得る近道ともいえます。
原文・原点から始め、古典の精粋、雰囲気を味わうことを重視したいと思います。
内容が難しいかもしれませんが、先生の説明の上、日常の生活、養生における応用を加えると、『内経』の理論と思惟方法をより全面的に理解できて、自然にわかりだすことになるので、是非、ご参加ください。
「黄帝内経勉強会」第一期 日程表
期日 |
内容 |
詳細 |
1回 |
『素問・上古天真論』から入ります |
『黄帝内経』とは 黄帝内経は何を語っていますか 中医養生原則。法於陰陽・和於術数・順応自然・天人合一・形神一体 黄帝内経生命に対する認識 |
2回 |
『黄帝内経』における陰陽・五行学説① |
『素問・陰陽応象大論』原文 原文読み。注釈、解釈、解説。 陰陽調節方法、陰陽学説は養生における応用 |
3回 |
『黄帝内経』における陰陽・五行学説② |
『素問・金匱真言論』『素問・陰陽離合論』などを選んで、原文読み。注釈、解釈、解説。 五行の相生相克による応用 |
4回 |
精気学説 |
精気神 『素問・五常政大論』『素問・天元紀大論』『素問・五運行大論』『素問・六微旨大論』から原文を選んで、読み、解説。 精気の基本概念・基本内容・人体の精・気 |
5回 |
『黄帝内経』における気・気運 |
気は何か・気の運行・気化とは 百病生於気・気の調節方法 |
6回 |
『黄帝内経』における臓腑① |
『素問・六節蔵象論』『素問・霊蘭秘典論』『素問・五蔵別論』『素問・五蔵生成論』などから選んで、読み、解説 |
7回 |
『黄帝内経』における臓腑② |
養生における応用 五臓養生 |
8回 |
『黄帝内経』における病因病機 |
『霊枢・百病始生』『霊枢・邪気蔵府病形』『素問・風論』『霊枢・本神』『素問・至真要大論』などから選んで、読み、解説。 養生における応用 |
9回 |
『黄帝内経』から見る養生思想 |
『素問・上古天真論』『素問・四気調神大論』『霊枢・天年』原文読み。解説 治未病。養生に関する理論・原則・養生智慧 黄帝内経に基づいた養生法 |
10回 |
『黄帝内経』における養生 |
四季養生・食養生・起居養生 |
「黄帝内経勉強会」第二期 日程表
期日 |
内容 |
詳細 |
1 |
熱病 |
『素問・熱論』『素問・評熱病論』など、原文読み、解説 外感熱病の概念、病因、伝変規律、治療原則、飮食禁忌 |
2 |
咳証 |
『素問・咳論』 原文読み、解説 咳の病因病機、辨証治療 |
3 |
痛証 |
『素問・挙痛論』『霊枢・厥病』 原文読み、解説 頭痛、心痛などの痛証の辨証治療 |
4 |
風証 |
『素問・風論』原文読み、解説 風証の病因病機、辨証治療 |
5 |
痹証 |
『素問・痺論』原文読み、解説 各種の痹証、病因病機、辨証治療 |
6 |
痿証 |
『素問・痿論』原文読み、解釈 痿証発生の病因病機、辨証治療 |
7 |
水証 |
『霊枢・水脹』『素問・水熱穴論』原文読み、解説 水腫の病因病機、辨証治療 |
8 |
月経病 |
『黄帝内経』における月経病の診断治療方法 |
9 |
睡眠病証 |
『霊枢・営衛生会』原文読み、解説 睡眠について、睡眠病の病因病機治療 |
10 |
健忘 |
『霊枢・大惑論』原文読み、解説 健忘の病因病機、辨証論治 |
11 |
鬱証 |
『素問・六元正紀大論』 原文読み、解説 鬱病の病因病機辨証論治 |
12 |
消渇 |
『霊枢・五変』『霊枢・奇病論』 原文読み、解説 糖尿病の辨証論治 |
13 |
復習及びテスト・修了認定 |
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講座の内容について進捗度合いにより調整する場合がございます。 終了後、受講証明書を発行します。 |
『黄帝内経』における養生
中国伝統医学を多くの方にお
伝えしたいと思います
まず中医学の原点である『黄
帝内経』から始めましょう
現代語訳は「黄帝内経素問」 (東洋学術出版社)を参考にします。
早期老衰の原因は「養生を知らず」にある
【原文】 『素問・上古
天真論』
余聞上古之人、春秋皆度百歳、而動作不衰。今
時之人、年半百而動作皆衰者、時世異耶、人将失之耶。岐伯対曰、上古之人、其知道者、法於陰陽、和於術数、食飲有節、起居有常、不妄作労。故能形与神倶、
而尽終其天年、度百歳乃去。今時之人不然也。以酒為漿、以妄為常、酔以入房、以欲竭其精、以耗散其真。不知持満、不時御神。務快其心、逆於生楽、起居無
節。故半百而衰也。
【現代語訳】 黄
帝が岐伯に問う。「私は、「上古の人はみな百歳になるまでも生き、しかも行動は衰えたりしてはいなかった」と聞いている。ところが、現在の人は五十歳にな
るやならずで動作が衰えてしまう。これは時代環境が異なっているためなのか、それとも人々が養生の道にはずれているためなのか」。岐
伯が答える。「上古の人は、養生の道理をわきまえ、陰陽にのっとり、術数に合わせ、飲食には節度があり、労働と休息にも一定の規律があり、妄りに動くこと
をしませんでした。それゆえに肉体と精神とは、とても健やかで盛んであり、彼らが当然享受すべき年令まで生きて、百歳をすぎて世を去ったのです。現在の人
はそうでなく、酒を水のように食り飲み、異常なことを平常として生活し、酔っては房事を恣いままに行い、色欲のおもむくままにして、精気を使い竭し、真元
を消耗し散佚させてしまいます。精気を保持することを知らずに、常々精力を用い過ぎ、一時の快さを貪り、養生に反して享楽しています。生活に一定の規則が
ありません。こんなことだから五十歳になるやならずで衰老してしまうのです。」
【解説】 古
今の寿命の比較を通じて、養生による長寿の重要性を論述している。「上古の人」は自然界陰陽法則に基づいて生活するので、百歳になるまでも生きる。「今時
の人」は養生の原則に反するので、五十歳にならずに衰老する。このような違いは養生しているかどうかにある。養生は健康と長寿に対する重要な意義を説明し
ている。
多くの重要な養
生原則、例えば「法於陰陽、和於術数」、「食飲有節、起居有常、不妄作労」「形与神倶」、「房事適度」、「労逸適度」、「保精寧神」などは重要な養生
原則である。
『黄帝内経』にお
ける養生―治未病の思想
【原文】 『素問・四気調神大論』
是故聖人不治己病治未病、
不治己乱治未乱、此之謂也。夫病己成而後薬之、乱己成而後治之、譬猶渇而穿井、闘而鋳錐、不亦晩乎。
【現代語訳】
このゆえに「聖人は、病気になってしまってから治療するのではなくして、まだ病いにならないうちに治療する」、というのである。国家を治めるのと同じよう
に、騒乱が起こってしまってから、これを治めるのではなくして、騒乱の発生する前に、未然にこれを防ぐのである。仮りに疾病がすでに発生してしまってから
治療したり、戦乱がすでに起こってしまってから平定するということであれば、つまり、口が渇いてやっと井戸を掘ることを思いつき、戦争になってからやっと
武器を造ることを考えるのと等しく、それでは、あまりにも遅すぎるのではなかろうか。
養生原則
1.精神を調節す
る
中
医学は人の情志活動と人体の健康との関係を非常に重視している。七情が太過(激しいや長期間にわたる)すれば、直接に臓腑に損傷を与え、気機の失調、疾病
の発生を起こすことになる。さらに人体の正気を損傷し、人体の自己調節能力を減退させる。従って、調神、養神、養性は養生の重要内容である。『素問・上古
天真論』は「恬憺虚無、真気従之、精神内守、病安従来」(恬憺虚無なれば、真気これに従い、精神内に守る、病安んぞ従い来らんや)といい、即ち、心がけは
安らかで静かであるべきで、貪欲であったり、妄想したりしてはならない。そうすれば真気が調和し、精神もまた内を守ってすりへり散じることはない。このよ
うであれば病が襲うというようなことがあろうか、と説いている。
第一:情志病証
【原文】
霊枢・本神
是故?惕思慮者則傷神、神傷則恐懼、流淫而不止。因悲哀動中者、竭絶而失
生。喜楽者、神憚散而不蔵。愁憂者、気閉塞而不行。盛怒者、迷惑而不治。恐懼者、神蕩憚而不収。
【現代語訳】 畏
怖と思慮がすぎれば心神を傷り、心神が傷られば恐れるようになる。悲哀がすぎれば内に肝を傷り、正気を竭亡させて死亡する。喜楽がすぎれば神気が散じて固
守しない。憂いがすぎると気の機が閉塞して通じない。大いに怒った後は精神が混迷する。恐れが甚だしければ神気が散失して収まらない。
【原文】
素問・挙痛論
百病生於気也。怒則気上、喜則気緩。悲則気消、恐則気下。寒則気収、炅則気泄。驚則気乱、労則気耗、思則気結。
【現代語訳】 疾病が気の異常に
よって発生する。激しく怒れば気は上逆し、大いに喜べば気は弛緩し、悲しめば気は消沈し、恐れれば気は下降する。また寒にあえば気は収縮し、熱によって気
は外泄する。驚けば気は乱れるし、過労によって気は消耗し、思慮すれば気は鬱結する。
【解説】
第二:調養精神の
具体方法
【原文】 素問・上古天真論
夫上古聖人之教下也、皆謂 之虚邪賊風、避之有時。恬憺虚無、真気従之、精神 内守、病安従来。是以志閑而少欲、心安而不 懼。形労而不倦、気従以順。各従其欲、皆得所願。故美其食、任其服、楽其俗、高下不相慕。其民放曰朴。是以嗜欲不能労其目。淫邪不能惑其心。愚智賢不肖不 懼於物。故合於道。所以能年皆度百歳、而動作不衰者、以其徳全不危也。
【現代語訳】
【解説
2.自然に順応す
る
自 然界の陰陽消長は人体の陰陽の気に影響するので、人体は必ず自然の陰陽消長変化に適応しなければならない。『霊枢・邪客』に「人与天地相応」とある。『素 問・宝命全形論』は「人以天地之気生、四時之法成」という。即ち、人は天地の大気と水穀の精気に依拠して生存し、四時の生長収蔵の規律に順応して生長して いる。自然界の変化に適応しなければ、疾病の発生を引き起こすことになる。『素問・四気調神大論』に「陰陽四時者、万物之始終也、死生之本也。逆之則災害 生、従之則苛病不起」とあ る。陰陽四時の変化 は、万物の生長、衰老死亡の根本である。これに反すると災害をまねき、これに順えば疾病も生じない。自然界の陰陽消長 法則に従う養生は、中医養生学の基本原則である。『素問・四気調神 大論』は四季変化法則に従い、「春夏養陽、秋冬養陰」の養生原則を指摘した。
【原文】 四時 調神大論
【原文】 『素問・四気調神大論』
春三月、此謂発陳、天地倶
生、万物以栄。夜臥早起、広歩於庭。被髪緩形、以使志生。生而勿殺、予而勿奪、賞而勿罰。此春気之応、養生之道也。逆之則傷肝、夏為寒
変、奉長者少。
【現代語訳】
【原文】 素問・四気調神大論
夏三月、此謂蕃秀。天地気
交、万物華実。夜臥早起、無厭於日。使志無怒、使華英成秀、使気得泄、若所愛在外。此夏気之応、養長之道也。逆之則傷心、秋為?瘧、奉収者少、冬至重病。
【原文】 素 問・四気調神大論
秋三月、此謂容平。天気以 急、地気以明。早臥早起、与?倶輿。使志安寧、以緩秋刑。収斂神気、使秋気平、無外共志、使肺気清。此秋気之応、養収之道也。逆之則傷肺、冬為?泄、奉蔵者少。
【原文】 四気
調神大論
冬三月、此謂閉蔵。水氷地?。無擾乎陽。早臥晩起、必
待日光、使志若伏若匿、若有私意、若已有得。去寒就温、無泄皮膚、使気亟奪。此冬気之応、養蔵之道也。逆之則傷腎、春為痿厥、奉生者少。
【現代語訳】
【解説】
3.飲食有節
第一:多種類を組
み合わせる
【原文】 素
問・蔵気法時論
五穀為養、五 果為助、五畜為益、五菜為充。気味合而服之、以補精益気。
【解説】
第二:飲食の治療
作用
【原文】 『素問・五常政大論』
病有久新、方有大小、有毒無毒、固宜常制矣。大毒治病、十去其六、常毒治病、十去其七、小毒治病、十去其八、無毒治病、十去
其九。穀肉果菜、食養尽之、無使過之、傷其正也。不尽、行復如法。
【解説】
第三:調和五味
【原文】 素問・生気通天論
陰之所生、本在五味。陰之五宮、傷在五味。是故味過於酸、肝気以津、脾気乃絶。味過於鹹、大骨気労、短肌、心気抑。味過於 甘、心気喘満、色黒、腎気不衡。味過於苦、脾気不濡、胃気乃厚。味過於辛、筋脈沮弛、精神乃央。是故謹和五味、骨正筋柔、気血以流、?理以密。如是則骨気以精。 謹道如法、長有天命。
【現代語訳】
【原文】 素問・五蔵生成篇
是故多食鹹、則脈凝泣而変
色。多食苦、則皮槁而毛抜。多食辛、則筋急而爪枯。多食酸、則肉胝皺而唇掲。多食甘、則骨痛而髪落。此五味之所傷也。放心欲苦、肺欲辛、肝欲酸、脾欲甘、
腎欲鹹。此五味之所合也。
【現代語訳】
【原文】 素問・至真要大論
夫五味入胃、各帰其所喜。
故酸先入肝、苦先入心、甘先入脾、辛先入肺、鹹先入腎。久而増気、物化之常也。気増而久、夭之由也。
【現代語訳】
【解説】
第四:飲食宜忌
【原文】 素問・熱論
帝日、熱病己愈、時有所遺
者、何也。岐伯曰、諸遺者、熱甚而強食之。故有所遺也。若此者、皆病己衰而熱有所蔵、因其穀気相薄、両熱相合、故有所遺也。帝曰、善。治遺奈何。岐伯曰、視其虚実、調其逆従、可使必己矣。帝曰、病熱当何禁之。岐伯曰、病熱
少愈、食肉則復、多食則遺。此其禁也。
【現代語訳】
【解説】
【原文】 素問・宣明五気篇
五味所禁。辛走気。気病無多食辛。鹹走血。血病無多食鹹。苦走骨。骨病無多食苦。甘走肉。肉病無多食甘。酸走筋。筋病無多食酸。是謂
五禁。無令多食。
現代語訳
4.起居有常
起
居有常は生活起居には一定の規則があることを指している。主に睡眠、労働、性生活などを含んでいる。長生きは、必ず「法則大地、象似日月」(『素問・上古
天真論』)をしなければならない。そのため、『素問・四気調神大論』には四季の朝晩の臥起があり、『素問・生気通天論』には平旦、日中、日西の労作休憩が
ある。
①まず労逸適度
【原文】 素問・宣明五気篇
五労所傷。久視傷血。久臥傷気。久坐傷肉。久立傷骨。久行傷筋。是謂五労所傷。
【現代語訳】
【解説】
【原文】 素問・経脈別論篇
故飲食飽甚、汗出於胃。驚
而奪精、汗出於心。持重遠行、汗出於腎。疾走恐懼、汗出於肝。揺体労苦、汗出於脾。故春夏秋冬、四時陰陽、生病起於過用。此為常也。
【現代語訳】
【解説】
②その次、節欲
【原文】 素問・上古天真論
酔以入房、以欲竭其精、以
耗散其真。・・・・・・故半百而衰也。
【現代語訳】
【原文】 素問・百病始生篇
酔以入房、汗出当風、傷脾。用力過度、若入房汗出浴則傷腎。
【現代語訳】
【原文】 素
問・痿論篇
思想無窮、
所願不得、意淫於外、入房太甚、宗筋弛縦、発為筋痿、及為白淫。故下経曰、
筋痿者、生於肝、使内也。
【現代語訳】
【解説】